さっき左足の小指を風呂場の間口にぶつけてひとしきり悶えたあと、世界における怒りの総和が増えてしまったわけだが、やはり生きていると腹が立つ。それは例えば自分の行跡の悪さだったり、他人の不出来に腹が立ったりと、枚挙に暇が無い。
しかしどうしてこのように他人や自分に腹が立つかというと、それはひとえにたくさん期待をしているからなのであって、最初から期待しなければあまり腹が立たなくて怒らずに済む事も多い。 自分は秀才であり何についても見識を持っていなければならぬのだと考えるから見知らぬ事物があったときに腹が立つし、他人は自分と同じくらい出来て当然だと考えているから他人の不始末に腹が立つのである。そして、世の中は公平公正たるべしと思っているから世の中について牙を剥かねばならなくなる。正常に振る舞うべきだという思い込みを捨てるべきである。
自分はダメ人間だということにしておくと、例えば洗濯物が溜まってもまあダメ人間にしては上出来だと思って洗濯にかければ良くなる。他人との会話にしても、何か面白い話題を提供しなくては、価値ある人間とみなされなくては、という重圧から逃れて、めちゃくちゃでかいハナクソが出た、みたいな話をしておけば良い。それで他人が腹を立ててどこかに行ってしまっても、あいつには俺の心の機微が分からんのだ、ユーモアを解さないのは可哀想だ、と思っておけば良いということになる。
できなかった事があっても、そんなに気負わずに、みんなこの位だろと思っておけば良い。例えば未だに自分はReactをサラサラ書けないけれど、空で書けるのは聖書を暗誦するのと同じで、特異技能なのだから、あまり気にすることはない。
他人もしょうもない人間だということにしておくと、飲みすぎで生活が崩壊したり漢字検定100級みたいな簡単な漢字が書けなくても、助けてやることはあっても腹が立つことはないはずである。お互いにしょうもない人間なのだから、しょうもなさを分かち合おうという気持ちになる。
社会が良くなるのは立派なことだと思うが、だからといって良くあるべきと考えて苦しむのは不採算だからやめたほうが良さそうだ。SNSで人が暴れていても、人類の歴史を思えばかわいいもので、薔薇戦争よりは随分と良さそう、みたいな悠長な気分になるはずだ。自分が特に腹を立てなくても、腹を立てるのが上手な人はいくらでもいるので、そういう人に任せて自分は面白い事を考えておけば良い。
そもそもSNSといったしょうもない人がしょうもない事を書き込む事を許されているシステムでは、書き込みがしょうもないのは自明の理であり、腹を立ててもしょうがないような気がする。これが書籍とかになると、しょうもない事を書いては出版社が許さないので、編集の人が叱ってくれる仕組みになっている。
Twitterのことを何かこう高尚なオピニオンの場かのように思ってる人がちょくちょくいるが、実際には猿が威嚇しあってる中でたまに道具を使って木の実を割るなどの知的行動が観察されるみたいな感じなんだよな
— むすた-M3 (@nagato1941) 2022年4月16日
さて、しかしながら残念な事に、世の中の、しょうもない人を許さない度が年々上昇していて、生娘をシャブ漬けだガハハとか言っていると一般大衆がそれを許さずに炎上してクビになったり、乳がでかい広告を電車に出したりすると叩かれたりする。とにかく、憎悪はマネーになることが小銭稼ぎ手段として認知されつつある上、しょうもない人というものは可燃物のようなもので、それ自体で害を為すわけではないけれど、燃やされるとなす術は無い存在である。世の中はそれだけギチギチに効率化されていて、皆と同じ事を考えないと効率的ではないし、しょうもない人はその範疇から外れてしまっているので皆の邪魔になるから許されない、ということになっている。効率的におカネを生み出すために、守るべきルールがどんどん増えていっている。建前としては人間は善の振舞いをしなければならないので、異常に窮屈なルールを要求する人がいても、それが一応善っぽければ従わなければならないことになっている。この、善っぽい振舞いをしなければ失職するリスクがあるというのが、現代社会の怖いところだと思う。悪人から奪うのではなく、善人に与えることで幸せになったほうが良い。
ところで私の祖父は大正生まれで、戦争にも行っていたが、昔の人だからいい加減で、夏場は股引一丁で近所をウロついていた。年々そういうしょうもない振舞いは許されなくなってしまい、上裸でウロついてはならぬという現代的ルールに屈してしまい、パジャマでうろつくようになった。しかしパジャマでうろつくのもいずれは禁止されるだろうと思う。夜パジャマでうろついていたらコンビニにでも行くのかなと思われるだけだが、昼間にパジャマでいると異常者として扱われてしまうだろうと思う。パジャマが禁止される前に祖父はこの世に見切りを付けてあの世で上裸で暮らしている。
このブログも雑に書いて良いという事にしているので、特にまとめは無い。
最近読んだ本はこれで、聖書の引用がめちゃくちゃ多いけれど面白かった。
