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京都在住Webエンジニアの日記です

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文字が持っていたフィクション性の終焉

インターネットをしているとしばらくぼんやりした気分になってしまうことがある。それ自体はよくあることなのだが、自分の脳というか意識がどこに属しているのかが気になってきた。おそらく脳は自分がどこに属しているのかを知っていて、現実よりもより現実らしいインターネットの方を己の住処だと思い込んでもおかしいところはない。

 

最近はもっぱらインターネットの世界にのみ興味を持って、現実の世界にあまり興味が持てなくなっている自分がいて、自分がこのままインターネットに吸い込まれてしまうのではないかと不安になってしまった。たまに現実の世界に戻ってくると自分は生き生きと活動することができるのだけれど、インターネットの世界に興味を持っている間は、足のない幽霊のようにただ彷徨続けている。インターネットは現実なのだろうか。

 

世界を2つの側面に分けてみよう。1つは我々が普段ウロウロしているこの現実の世界で、もう1つはインターネットや書籍等の中にある、知的認知によって成り立っている文字の世界である。その文字の世界と、自分との関係についての話である。

 

自分はインターネットにあまりにも熟達しているので、ほぼ現実の延長線上としてインターネットを捉えている。インターネットで発生している事は、フィクショナルな出来事ではなく、現実に発生していることなのだ。自分にとって。ソフトウェア開発者でありながら、インターネットが好きな人間として、かなり早い時期からコンピューターやインターネットを使いこなしてきた私にとって、インターネットとは現実そのものである。自分は読解する力がかなり高いのか、文字の情報を即座に脳の中に再構成してしまう。

 

そしてインターネットはあまりにも現実的で、本物の現実を凌ぐ。Twitterでは文字の濁流が、TikTokでは映像の濁流が「より現実らしい現実」を見せている。なぜか、自分はそれをどんどん現実として受け入れている。まだ子供でテレビを見ていた頃、そこに写し出されるものは一種のフィクショナルなものとして、箱の中の物語として認識できていたが、インターネットは現実的なものとして、箱の外の現実として受け入れている。かつてフィクション性を持って捉えていた文字と言う存在が、極めてリアルな現実の媒介として使われている。自分にとって文字は「空気」になっている。

 

自分は、インターネットの向こうに現実の人間がいると言うことを「知っている」。たまに有名人のアカウントに罵詈雑言を投げつけて、返事が返ってくると慌てて逃げていく人がいるが、そういった人はインターネットの向こう側に人間がいると言うことを認識していない。自分は現実の人間のことを知っているから、よりインターネットに現実性を感じてしまうのかもしれないし、文字というものに現実性を付与してもおかしくない。

 

 

文字の世界に吸い込まれている間は、頭の中を様々な言説が飛びまわって、意識が絶え間なく覚醒し続けて、休みない状態になっている。他人の状態が気になったり、自分のことが気になったりしている。現実世界に起きる出来事は、あまりに無味乾燥で、自分から遠ざけられていくように感じる。

 

自分を吸い込む文字の世界とは端的に言えば「話題」である。動き、すなわちダイナミズムそのもの。何事も表現なしには存在しえず、ただ存在しているものが存在しえない。知的営みによって動的に構成されるもの。ダイナミズムによってのみ構成される世界の中で生きていると、ただじっと考えたり休んだりする暇も与えられない。

 

現実の世界にいる間は、目の前の物事に集中できるし、物事の特徴がよく観察できている。でもかなり気をつけて意識し続けていなければ、自分はすぐに文字の世界に吸い込まれてしまうと思う。いちどインターネットの楽しさを味わってしまえば、現実はあまりにも無味乾燥で楽しくないもの。でもそれはダイナミズムの世界であって、確固たる足場に落ち着くことができないだろうと思う。

 

たまに、完全に想像の世界の中に生きていて、現実との意思疎通が困難になってしまっている人がいる。例えば怪しい宗教に洗脳されてしまった人がそうだし、精神的な不調によってそうなってしまう人もいる。しかしインターネットの中に生きると言うこともそういうことなのではないか。インターネットははなから想像の産物、知的活動のダイナミズムによってのみ構成される世界である。それは現実ではない。しかしあまりにもそれが現実的であるから、現実として取り扱ってしまう。Instagramの世界は現実ではないけれど、人はそれを特に疑うことなく現実だと認識している。

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