連休を利用して金沢に彼女と一泊二日で旅行した。旅行の翌日はたいていクタクタにきまっているので、一日余裕を空け、その日はおみやげを食べるという作戦にした。
ルートはシンプルで、京都を発ち、金沢で過ごし、また帰るというもの。国立工芸館、武家屋敷、回転寿司、『あんと』(金沢駅にある巨大おみやげコーナー)をMUST目標とし、21世紀美術館、『つぼみ』(和菓子店)をSHOULD目標とし、県立図書館(建築で著名)をMAY目標と設定していた。
ちなみに説明なき限り写真はFujifilm X-E4とキットレンズ、撮って出しである。
北陸乗継チケットレス
ところで、近畿圏から金沢といえばサンダーバードだが、北陸新幹線の延伸にともなって敦賀でサンダーバードは終わっており、そこからは乗り換えて北陸新幹線に乗り継ぐという構成になっている。これはe5489の『北陸乗継チケットレス』なるサービスを利用すると一気通貫して予約が取れるし、ICカード乗車ができて大変スムーズなのでこれを利用すると良い。
北陸は寒いぞ
また、今回は大雪が降るという予想だったため準備に難儀した。スノーシューズや手袋を持っていなかったため、 降り具合によっては駅から近くのモンベルで買うという作戦にしていた。最終的に手袋を駅横の商業ビルにあったコロンビアで買うことになった。雪風が吹く冬の金沢では絶対に手袋が必要である。猛烈な速度で指の温度が奪われるためだ。

防水スプレーを持っていったのも幸いし、ブーツが浸水するということはなかったが、ややしっとりしてしまったので、長居するのであればスノーシューズにしたほうがよいと思う。
また、分厚く時として融けてシャバシャバになっている北陸の雪に対して、キャリーケースは一切役に立たない。ぜんぶ手で持って運ぶ根性があるのでなければリュックなどにするのが賢明だ。
金沢へ
サンダーバードは湖西線を滔々と滑っていた。列車で朝食を食べているうちに、ゆっくりと景色は銀色へと鍍金されていき、ここまでは美しかったのだが、さらに空が鈍色へと変わっていった。

完全に不穏な天気だったが、到着する頃には雪は止んでいて、アイドルが駅前地下通路で爆音で踊っていた。金沢の中心界隈はそこかしこに地下通路があって、徒歩の交通を助けている。

今回はANAクラウンプラザホテル金沢に泊まることにした。早めに予約したためやけに安かったが、こういう大雪シーズンなのも関係しているかもしれないなと思った。昔からある駅前の由緒正しいホテルという感じで、某政党の研修会が行なわれているようだった。

クラークにお願いすると荷物を預ってくれたので、ここからはデジイチと財布だけで出歩けるようになった。駅前のホテルはこのへん大変便利だ。ちなみに、帰りもホテルを出るときにある程度荷物を預けて、新幹線に乗る前に荷物を引き取って帰ることができた。
室内は広くて綺麗だった。決して今風の真新しい設備があるわけではないが、作りはしっかりしており、日本に金がたっぷりあった時代の、余裕のあるしつらえをしていた。設備が最新で部屋がギチギチよりは、こちらのほうが好ましく思われた。
一日目
まずは腹ごしらえがしたくなったので近所の回転寿司に行った。が120組待ちと言われたので、予約するだけしてバスに乗って武家屋敷に見物に行くことにした。スマホから残り何組かが表示されるから、良い具合になったら帰ってくるという作戦だ。ひとまず店の前で5分待ち、おおかたの回転率を見積って、2時間くらいは余裕だろうという結論を得たので、バスでうろつけば丁度良い感じだった。
バスの一日券は800円だった。金沢のバスの体系は複雑で、まずバス会社がいくつかあり、周遊バスとそうではないバスとがあり、周遊バスは現金が使えるがそうではないバスはキャッシュレスオンリーで、なおかつ一日券に整理券が必要なバスとそうではないバスとがある。われわれはバス学の学位を持っていないので、ちょっと大変だった。しかし一日券には箔押しされており、若干贅沢な気持ちになる。
武家屋敷跡

バスで数駅揺られて歩いていると、武家屋敷跡が顔をのぞかせる。この頃になると少し雲が厚くなり、粉雪が舞っていた。印象的な土塀は古式ゆかしい版築で、土を撞き固めた上に、雨や雪から耐えるために屋根がほどこされている。静謐で落ち着いた界隈に旅客の声がときおり響くのは面白い。普段の我々の生活にはいくらでも広告が埋め込まれていて、それを目にしない日など無いのだが、こういった歴史地区では広告のない空間を体験できるし、その度にいかに我々の生活からこの種の安寧が剥ぎ取られていることか、と思う。

界隈には焼き物の店が数件あり、色とりどりの九谷焼が陳列されていた。今回は焼き物の購入はなかったが、漆器の盆に心躍るものがあった。しかしお盆は既にあるのでちょっと逡巡し、今回はよしておくことにした。かわりにかわいいお箸があったのでそれを買った。

寒くなってきたので、近所で目をつけていた『和菓子村上』に突入した。店内で加賀棒茶と栗きんとんをいただいた。栗ようかんを買ってお土産とした。

ところでこういう写真はある程度望遠寄りにしてカメラを遠ざけてから撮影すると良い感じになるようだ、ということがわかった(この写真は37.4mm)。というかスマホでぼんやり撮影するとめちゃくちゃ広角になってしまう。
ちなみに15mmで撮影するとこうなる。

こういう旅行をしていると、単焦点レンズが欲しくなってくる。綺麗な玉ボケが欲しくなってくるためだ。
回転寿司
そうこうしているうちに寿司の待ち行列がハケてきて、あと30分くらいだな、という状況になってきたためバスで撤収。結局2分で1組しかハケなかった。昼飯と言うにはあまりにも遅い時間になってしまった。
金沢の寿司は、ネタが大振りで、うまみが強く、新鮮で、完全無欠の寿司がやってくる。



金沢では、海老がうまい。うますぎて食べてしまう。海老に神がいるなら、金沢のことを恨んでいるだろう。

ところで自分は寿司に行くと必ず鯵を食べる。青魚の中で一番好きだと思う。適度に脂があり、甘くて、さっぱりしている。
しかし、海の街に行ったら、必ずイワシや甘海老といった、足の早いものを食べてみてほしい。金沢のイワシはうまかった。
この店では職人が黙って寿司を作っている。ラッシャッセッと声を張り上げる店も多い中、この店は落ち着いた雰囲気で寿司がやってくる。どちらが良いというものはないはずだが、こういうスタイルが好きだと彼女が主張しており、自分もそう思った。爆音を聞きに寿司屋に来ているわけではないはずなので、S/N比が高い寿司のほうがいいと思う。
酒
この時点で18時ごろになってしまった。陽は落ち、風は冷たくなりつつあった。

『あんと』で和菓子をおみやげにしつつ、ホテルに帰っていったん休憩してから夜に居酒屋に行くことにした。

まずは八兆屋というこのへんのチェーン店に行った。チェーンだが値段のわりにうまいという前評判だ。
(居酒屋にはデジイチを持っていかなかったのでスマホ撮影)


ところで、宮崎の雲海というそば焼酎がうまかった。ぜんぜん加賀ではない酒を飲んでしまった。

しかし21時ごろに行ったからか、人気メニューはどんどん売り切れておでんが食べられない!しょうがないので遅くまでやっている店に脱出する。
すると九十九という店に来た。チェーンではない大衆居酒屋という感じで、隣でクラブ活動の打ち上げみたいなのをやっていて賑やかだった。ここでは蟹味噌とかを食べたのだが、けっきょくおでんやじぶ煮は売り切れて食べられずじまいだった。次回リベンジしたい。
ちなみにここでは神泉という日本酒を飲んだ。小松の地酒らしい。
個人的には淡麗辛口が好きで、このお酒もそう。自分はあまり日本酒は飲まないのだけれど、魚介などと合わせると非常においしいことがわかったのでこれから開拓したい。
二日目
けっこう飲んだがホテルのチェックアウトが11時だったのでぐうぐう寝ており、翌日はケロッとしていた。

外に出るとやはり寒かった。寒い中にもしっかり日射しが出ており、その中にいる間は暖かった。融けかけた雪が陽光に照らされて輝いているのが美しかった。

ブランチとして近江町市場でまた寿司を食べることにした。この街では、魚はいつ食べてもうまい。

寿司2
予定調和というべきか、やっぱり寿司屋は30分ほど待つようだったので、発券だけして市場をうろつくことにした。日本人観光客カップル、異国の言葉、値引きの口上を繰り出すオッチャン、時おり天井からしたたる雪解け水、運命を受け入れきれずに藻掻いている蟹、理系大学院生のグループ、香ばしいエビのにおい、生臭い発泡スチロールの空箱、活気。
我々はぜんざい屋で生麩が入ったぜんざいを飲んでいた。市場には日射しが入らず、案外寒い。自然と吐いた息は白く立ち登っていくし、髭が結露してべしょべしょになった。

順番が来て寿司にかけつけると、果たして寿司はうまかった。赤身ですら相当脂が乗っていた。貝は噛むほど旨みが出てきた。あおさ汁は身体を温めた。
満腹してボンヤリしたまま店を出ると、ZIPの取材班がいて親子に何か尋ねて撮影していた。その射線に入ってしまったので、ボンヤリした顔が全国放映されないか心配である。
国立工芸館
今日は国立工芸館に行くと決めていた。無知蒙昧ゆえにそんなものがあるとはつゆも知らなかったが、大人300円という破格で最高峰の工芸を見せてくれるようだ。
バスが満員で乗れる気配もなかったので、タクシーを呼んで坂をぐいぐい登り、果たして金沢城の界隈にそれはあった。

もともとは明治時代から陸軍は第九師団司令部庁舎だったそうで、建物も保存されている。このため、昔ながらの建物の趣と現代の設備とが入り交じった面白い空間になっている。





伝統的な実用工芸品から美術品、現代のポスターに至るまで幅広く展示されていたのでおすすめ。なんと展示されていた皿がそのまま売られていたのが面白かった。工芸品なので、手が届く価格帯の量産されたお皿などは普通に売店で買えるのだ。
くず切り
さて、近所には料亭が運営している和菓子店があるというのでそこに行くことにした。Google Mapによれば美術の小径なる道を通ると早いということだったのだが、雪が積もっている上に激坂階段を通過するはめになり、普通に死ぬかと思ったので気合いが必要。

平坦な部分ですらこれだった。
人間除雪車になり戦車のごとく雪道を突破していると、金沢市庁舎のあたりに出てきた。このあたりに『つぼみ』というお店があり、くず切りや栗ぜんざい、かき氷などをいただける。

自分はくず切りと栗ぜんざいのセットをいただいた。くず切りは氷で締められていて食感がもちもちしており良かった。
そうこうしているうちに、雨足ならゆ雪足はどんどん強まっていき、空は鈍色から濃鼠へと、大気はますます冷えていった。
あまりにもすごい雪なので途中でカフェに寄り、ガレットを食べた。

帰宅
本来は20時に電車に乗る予定だったのだが、あまりの寒さと雪にこれ以上は行動できないだろうと判断し、予約を変更して19時に変更した。このへん簡単なのがネット予約のいいところ。自動的に乗り換え先のサンダーバードも変更された。駅の『あんと』でふたたびお土産を求めて渉猟しつつ、ホテルに預かってもらっていた荷物を引き取って新幹線に乗り込んだ。
降りしきる雪をものともせず、北陸新幹線はゆっくりと滑り出した。次第に街の明かりが遠ざかっていき、あたりが夕闇に閉ざされた頃、和菓子をいくつか開けて食べてみたが、どれも本当においしい。金沢の食は本当に豊かだと思った。百万石の名前はウソではない。実は以前に一度金沢に行ったことがあったのだが、その時もなんでもうまかった。
『あんと』では和菓子に限らず漆器なども売っているのだが、ある漆器を眺めていると、おもむろに店員がやってきて色々紹介してくれるのだが、最後に言った「今はもう作ってないかもしれない」という言葉が重かった。金沢を擁する石川県はいまだ震災の渦中にあり、ホテルで暇つぶしに見たテレビの地方局でも、震災とその復興というテーマが通奏低音としてつねに流れているし、あらゆる商業施設に募金箱が置いてあるのだ。ここでは震災は手の届く範囲で今まさに発生している現実の問題であり、メディアが報じるイシューの一つでも、ネットで繰り返される言論バトルゲームでもない。そんな中、なんとか魚は届けられるし、なんとか漆器も作られている(といいのだが)。自分は微々たる金額を使って帰ってきたわけだが、苦しんでいる人々に救いがあらんことを祈るばかり。
KPT
- K: 防水スプレーを持っていったのが奏功した
- K: ハクキンカイロとジッポーが活躍した
- K: ヒートテックでぬくかった
- K: チケットレス乗車は非常に便利
- K: ホテルに荷物をとっとと預けるとよい
- P: 冬でも雪国はクソまぶしい
- P: ハクキンカイロはせいぜい24時間くらいしか持たないので換えの燃料と注入装置も持っていったほうがよかった
- P: おでんとじぶ煮のゲットに失敗
- T: 旅行では常にサングラスをもっていく
- T: 冬場の旅行ではハクキンカイロと燃料を持っていく(ただし飛行機には乗らなそう・・・)
- T: 今度こそおでんとじぶ煮を食べる