坂本龍一氏が亡くなった。享年71であった。大変なショックを受けた。
初めて彼の曲として聴いた曲は『Energy Flow』だった。親のコンピレーションCDの中に入っていて、たまたま聴いたのだ。
93年生まれなので、物心付いたときから彼は著名人として尊敬されて然るべき大人の名簿に名を連ねていることをなんとなく承知していたから、自分の中では彼は作曲家というよりもむしろ文化人とか元勲のような肩書が付いている。
他方、物心がだいぶ付いてから彼の曲を聴くに、底まで透き通ったような透明感と独特の哀愁とを同居させられる、人間の手に余るものを楽譜として著述する、唯一無二の作曲家であった。
この国のエネルギー政策をめぐる対立の中にも彼はいて、批判の嵐とインターネットの悪意に曝されながらも、彼はロックを貫いた。彼はロックの体現者でもある。思想の差や合う合わないはあれど、彼は彼の思想を貫徹した。そのことは永遠に記憶されるだろう。
戦後を代表するような偉大な人物が、次々と安らかな眠りについていく。彼はある意味時代の顔だったわけで、その顔が欠けてしまった現代を見て自分は少し強く怯えている。タモリの言う「新しい戦前」という言葉と一部オーバーラップする箇所がある。
彼の魂が安らかな場所にあり、飽くなき音楽の追求への栄光あらんことを。