底冷えが厳しい季節になってからどのくらい時間が経ったろうか.相変らず俺の家は寒い. とはいえ昨日から断熱カーテンを導入したので,熱のやりとりはビニール一枚隔てて行われるようになり,大分温度変化がおだやかになったようだ. 部屋が暖かくなると人間はリラックスできる. 住居は人間の砦である.社会から自分を切り離し,快適で安全な住居をもたらす要塞だ.
しかし不思議なことが起きるものだ.その要塞の中にあってもなお心が静まらず不安な感情が消えないとしたら,あなたならどうする? 大学時代の下宿先がそうだった,就職してから住んだ家も,そこから引っ越した今の家も. そういう状態になってからかなりの年月が過ぎている.しかも不思議なことに,実家にいるときはそういう状態になりにくい. 実家ではけっこうリラックスできるし,それなりに眠ることができるのに,なぜだろう? ずっと長い間の疑問が少し分かった気がしたので,ちょっとずつ言葉で整理していこうと思う.
不安感と密接に結び付いている精神的な概念として,自分は何に帰属するのかという意識があると思っている. 帰属するべきものがないと感じると,人間は不安を感じる.たとえそれが自分の居室であっても,この恐怖は精神的なものだから逃れられない. 誰かの力を借りなければ人は生きてゆかれない.どこにも帰属していないなら,誰かの力を借りられないかもしれない.だから心に負担を背負わせることになる.
ところで俺は何かに帰属していない状態にあるようだ.だから不安感がつきまとっているのかもしれない.
なぜ俺はどこにも帰属していない(と自認している)のだろうか?
まず1つに自分の世界に対する認知が歪んでいるというもの. どこかに盲信的に帰属して党派性の争いをしている人間をインターネットでみかけまくったせいで,ああいうふうにはなりたくないと思って,どこにもずっぷり精神的に属しないのが良いと思っている.これはどっちがいいのかはわからない.自分がばらばらになっていく気がして,なにかに帰属するのが怖いのかもしれない.
つぎにこれも認知が歪んでいて,会社に所属していても平和に賃金を貰い続けられるとは限らない,だからいつ放り出されても生き残らなければ,というマインドがある. これはリーマンショックを目撃したり終身雇用が崩壊したり父親が仕事を辞めたりしたことの影響が大きそう.ちゃんと仕事しているし良い給料もらってるけど安心できないというか. だからいつも「生きてゆけるか」という根源的な不安が首筋あたりにまとわりついており,家でも腰を落ち着けられない. ある意味自分の能力に自信がないという事でもある.
また自分に自信がないので,プログラミングにおけるハッカー文化に帰属すると,つまり技術的な話をしまくって居場所を見付けるいうことも,なんか自分に嘘をついているようでできない.好きなんだけどな.またこの分野は上を見ればキリがないので,すぐヘコんでしまいそう.
そういえば昔からまとめサイトとかはてブよく見ているので,なんでも俯瞰して醒めた目で見てメタ視点からマウントするみたいなクセがついていて,そういう傾向も自分から主体性を奪い,実存を脅かし,人生をスポイルしているかもしれない.
数少ない帰属できそうな文化圏はロック文化で,これは高校・大学でベースやっていたというのと,HR/HMが好きでよく聴いてるというのがある.また叛逆的なところを愛するあたりがハッカー文化圏と相性が良い.ある意味ロックは帰属しないことを選んだ文化ともいえそうで,帰属しないことを選んだ文化に帰属しているというパラドキシカルな感じになっており,エモい.部屋にそういう要素をちりばめるといいかもしれないね.
今日は眠くなってきたのでここまで.