Lambdaカクテル

京都在住Webエンジニアの日記です

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着物屋に行ってきましたよ

かねてより着物に興味があったのと、近所の商店街に着物を売っている店があるという訳で古着の着物を見に行く事にした。新調するような銭も無ければ古着を買うだけの銭も無いので完全なひやかしである。

例の商店街に着物を扱う店は数店舗あるが、果たしてこの町に着物の需要があるのかが気になった。店が存続している手前、需要は少なからずあるのかもしれないが、この町で着物姿の人間なぞ殆んど見た事がない。これは全くの謎である。

さて、僕が最初に暖簾をくぐった店は古着の専門店らしかった。

店内はやや薄暗く、白熱灯の光の中でジャズのような音楽が流れていた。

様々な種類の着物—長着や肌襦袢の類が山積みにされ、メガネの店主が奥でパソコンを弄っていた。勝手口から見える日本庭園が涼しげであった。しかしながら男性用着物の品揃えが若干不足しており、そのため僕にはあまり関係の無い店だった。

商店街の脇道にひっそりと構えているその店から出ると、次の店を探しに自転車で移動した。春らしく微温い空気の中に風が吹いて心地がよかった。

しばらく移動して到着した二軒目。

硝子張りのショーウインドーの中に着物が飾られている様子はいかにも呉服店といった感じで、敷居が高く感じた。毛筆で記された立て看板によれば、この日は着付け教室を開催しているらしかった。別に着付けをして欲しい訳ではないし、なんだか店員がわらわら寄って来そうだった。*1なんとなく空気で分かるのだ。

この店はそのうち訪れる事にして、僕はほかの店を探すことにした。

最後に訪ねた店は、誂え物と古着の両方を扱う店らしかった。でも誂えと中古で看板を別々にしているような妙な感じの店だった。

店では瀟洒な感じのご婦人が古着を並べたり畳んだりしていた。

彼女は僕たちを見付けると愛想良く、なおかつ気さくに話しかけてきた。大学生の若者がこういう店に来るのは珍しいのかもしれない。

店内は僕の体にはやや狭かったが、無造作に着物が積み上げられているという風でもなく、古さを感じさせる煤けた木棚の上に様々の古着が種類ごとに畳まれて置かれていた。

ご婦人にひとしきりの自己紹介を*2し終わると男物の古着を見せてもらった。

男物の古着は比較的豊富に用意されていた。そのため、近い内にこの店と付き合いになるかもしれないと思った。ヨモギのような色の袴や、群青色のお対*3などを見せてもらった。

また入口近くの側壁には時代を彷彿とさせるインバネスコートが掛けられていた。その昔、資産家が売ってしまったという話だった。

その向かい側の壁には総絞りの振袖が飾られていた。烏羽色と白色の鮮やかなコントラストが、その美しい模様をさらに際立たせていた。仕立て直せば長く着られると婦人は嬉々として説明した。大分高かったらしい。

ふと頭の中に昨今の成人式の様相が浮かんだ。

着物は美しく着たいと思った。しかし、若者の着る着物をある程度は受け入れなければ、着物は晴れ着として固定化してしまうだろう。普段着としての着物を推進している立場からは、ある程度の変形もやむをえないと信じる。

さて、愛想の良いご婦人の店を後にして夕食の材料を買いに行った。

もう二日も前の話である。

*1:入りやすい店づくりというのが急務ではないかと思う。今の着物文化は若人には敷居が高すぎる。

*2:いわゆるマニュアル的な接客ではなく、彼女は客を大事にするような印象を感じた。

*3:長着と羽織を同じ生地でもって仕立てたものの事をこう言う。

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