まとめサイトが今後進むであろう道について書きました。
新聞はソースとして信用されている
すこぶるデカい颱風8号が近所を通るせいで外出や買い物もままならない状況に陥ってしまいました。 そんな強風の中で机に向かっていたところ、所用で使っていたとある法律系資料の中に「新聞報道によれば」という文言がありました。海外の事情はよく知りませんが少なくとも我が日本においては、ソースとしての新聞は内容に対するそれなりの信頼が寄せられているようです。世間一般においても新聞はそれなりに信頼されているようです。
ネットでは新聞は「マスゴミ」である
対してネット界隈では、新聞に対する信頼はさほど感じません。少なくとも私が関わる範囲についてはそうです。私が関わりようなネット界隈と言っても、やれまとめサイト、やれTwitter、やれブログ程度の小さなものですが。その観測範囲では、テレビや新聞に対する不信や蔑視的態度があちらこちらに見てとれます。ことにまとめサイトでは不信どころか権威の完全な失墜が発生しており、二言目にはマスゴミといった攻撃的な語を"まとめ"、どこからともなくこれは韓国・朝鮮の陰謀なのだとする予定調和的な"意見"が発生し、韓国を叩いてスッキリという台本になっています。 なんでも近所の半島に結び付けるソウルフルな態度や、内容によってコロッと立場を変える態度は歓迎しかねますが今回はそれは置いておき、マスコミがマスゴミと呼ばれる都合を見ていこうと思います。
なぜ「マスゴミ」か
端的な表現をすれば、マスコミがマスゴミと呼ばれる所以は「一般人のプライバシーをみだりに侵害し、あからさまな保身に走り、都合の良い事は喧伝するが都合の悪い事はおし黙るから」といったところでしょうか。これはほぼ間違いのない事実といってもよいと考えます。被害者家族への執拗な取材はネットから反発の声がみられますし、社員が悪事を働いてもそれをもみ消そうとしたりしますし、叩ける対象しか叩きません。
そう云うまとめサイトはどうなのか
マスコミがマスゴミと呼ばれる所以は把握いただけたと存じますが、その目をまとめサイトに向けてみたいと思います。普段から新聞テレビを絶妙な距離から罵倒しているまとめサイトですが、一般人のプライバシーを尊重しているといえるでしょうか。中立的な意見を表明しているでしょうか。
まとめサイトだって好き放題している
これも私の見た限りにおいてですが、とある都議に投げかけられた野次が発端となった一連の騒動の渦中で、かなりの数のまとめサイトが某都議の前歴を掘り返し、そのことで執拗に都議を罵る"様子を転載"していました。また、テレビ放送で流れた別々の映像のスクリーンショットをあたかも連続した状況であるように見せかけた内容を転載し、その後にその事実が話題となった際はその様子までも転載するという厚顔無恥さを晒しています。*1ほか、一般人の画像を「晒す」目的で貼り付けたものを転載する行為も存在します。また、まとめサイトに都合の悪いスレッドは転載しないなど、保身行為が行なわれていることは確実でしょう。
まとめサイトも公共性のあるサイトである
「新聞は公共的な発行物だから正確であるべき!まとめサイトは公共的ではないから良い!」という態度は不公正です。まとめサイトこそ、検索すれば簡単に候補に上がるべく鎬を削ってCEO対策を行なっている営利的存在であり、インターネットに公に記事を公開している存在です。
まとめサイトの記事責任
もう一つの問題が、「記事の責任の所在」の問題です。「新聞記事は記者や編集者の名前を出せ!」といったまとめが散見されますが、こういったまとめサイトはまとめを編集した人が誰なのかを明確に示すことがほぼありません。どうせ一人でシコシコまとめているのでしょうが、ひょっとしたら大規模なまとめサイトでは分業を行なっている可能性もあります。しかも、まとめサイトは「スレッドから転載しているだけ」という名目でやっているので、まとめた結果発生する影響についての責任を取らないでしょう。しかしどのレスを抜き出すかの選択を編集者は行なっているため、その表現の意図についての責任は当然問われなければなりません。また画像の転載も責任をもって行い、転載禁止の画像を転載することは慎まなければなりません。
どっちもどっち
さてここまで「マスゴミ」とまとめサイトを比較してみましたが、両者ともあまり程度に変わりがないことがご理解いただけたかと思います。
まとめサイトがマスゴミを越えるには
新聞の性質
新聞が引用元として有力なのは、新聞が物理的印刷物であり偽造が困難であり、それにより責任の所在が明確になり、記事が確実に存在することが保証されるからです。
まとめのシステムの整備
まず著作物としてのまとめサイトという観点から見た場合、作成した「まとめ」は著作物となるといえます(「おーぷん2ちゃんねる」では投稿はパブリックドメインとなる)。このためまとめの作成の責任はまとめサイトの編集者に課せられると考えてよいでしょう。責任あるメディアとしてまとめサイトが機能するためには、誰の責任でいつまとめを作成したのかを明確にし、みだりに記事の削除を行なわず、訂正する場合は訂正記事のような追記の形式を採り、デジタル署名で記事の所属を明確にし、いつでも同じURLから同じ記事が参照できることを保証する必要があるのではないでしょうか。
メディアとして当然のこと
また、プライバシーに配慮し、記事の捏造や意図的な印象操作をせず、公正なまとめの作成に力を入れる必要も同様にあると考えます。
まとめ
今回の記事の要旨は、
- 新聞はそれなりの信頼を得ているがネットでは「マスゴミ」として糾弾の対象である
- まとめサイトも「マスゴミ」と同じ手口に堕している
- まとめサイトは噂話の伝聞ではなく、記事には責任が伴う
- まとめサイトの記事や画像転載の責任は非常に不明瞭である
- 「保存できる情報源」としての性質をまとめサイトに付与すべきである
- 責任が取れないのであれば好き放題な記事を書いてはならない
でした。
大正期の新聞も現在のまとめサイトと同じく、スキャンダラスな記事を好き放題に書いたものが飛ぶように売れたといいます。その結果プライバシー等についての議論が発生し、そして正確で深い記事を求める時代の淘汰を受けた結果として、信頼できるソースとしての新聞が形成されました。
まとめサイトも同じように、時代の淘汰の中で様々に分化していくのだろうと思います。現在は皆同じようなまとめを作成していますが、そのうち新たな形態が表われるのではないかと楽しみにしています。