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京都在住Webエンジニアの日記です

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センセーショナルな情報とどう付き合うか / 情報収集の技法

文脈

陸自のヘリが宮古島の領海でレーダーロスト(≒海上に墜落する)という事故があった。着任から間も無い第8師団長が同乗していたことがほぼ確定しているようで、大変痛ましい。

b.hatena.ne.jp

悲しいことに、もう一つ痛ましいことがあって、中国軍の関与をほのめかす(特に論拠はない)コメントが早速報道動画に投稿され、それなりに支持されていることである。

www.youtube.com

だいたい、事故が起こったのは領海内だし、一般の航空事故を想定するのが普通だ。

でもやっぱり、人間はセンセーショナルなものに飛び付いてしまうことだなあ、と諦念をもってコメント欄を眺めてしまった。

とはいえ、自分も他人事ではないな、と思った。自分はたまたまちょっとミリタリーに心得があって、それなりに信頼できる情報源をいくつか持っているからこそ、こういう事象を理解できたのであって、自分が全くの門外漢になるようなドメインで起こったセンセーショナルな出来事に、冷静に対応し、事実を把握できる気がしない。

どうしてこういうヘンな盛り上がり方をしてしまうのかというと、センセーショナルな出来事に対して集団で盛り上がると気持ち良いからであって、羊が群れているのに近い感じだと思う。とはいえ人間も動物なので、こうした本能に従っていいかげんな情報を信じて盛り上がってしまうのもしょうがないと思う。大事なのは、それを如何にして防ぎ、 良い状態を保つ かだと思う。

今漠然と「良い状態」と書いたのは、しっくりくる言葉がうまく出て来ないから。「知的でいる」だと漠然としているし、「事実を理解する」だと表面的すぎてなんかよく分からない感じになる。

ウソを受容する場合

別にウソで盛り上がっててもいいじゃん、という態度もアリだと思う。というか現に我々は、半分くらいウソの情報を半分信じることによって盛り上がるきらいがある。 でも事実に接近したほうが良いでしょ 、という態度を自分は追い求めたいと思う。信じた情報がウソだと一般に損するし。しかし匿名空間だと、ウソで大盛り上がりするデメリットはあまり見当らない。道徳の領域においてウソは良くないとされているからみんなやらないだけで、ウソを信じてはいけない理由を筋道通して説明するのは難儀する。せいぜい、親しい人に迷惑をかけることになりますよ、という程度の警告しかできない。事実を知りたいという欲求がその人になければ、うまく説得できないと思う。特に何かを信じきっているような場合には。

でもやっぱり、雑な情報源で雑な知識を身に付けても、長期的には良からぬことになると思う。

ウソを拒否する場合

仮に、ウソで盛り上がるのは良くないですよ、というのを措定して、いったん成り立っていることにする(この社会が同じ価値観を共有していることを願う)。その前提を背に、センセーショナルな出来事が襲いかかってきたときに冷静を保ち、ウソを回避し、事実に(真実という言葉はあまり使いたくない。価値判断が語中に含まれているからだ)接近するには、どのような心構えや判断が必要になるのだろうか。このような議論は、ファクトチェックとか、ネットリテラシーと呼ばれる領域に入ってくると思う。情報収集の技法とでも言おうか。

最終的な到達地点は「好い暮らしを持続させる」なので、それを意識して考えてみる。好い暮らしのためにニュースを見たり考えたりするのであって、それ以外のことはいったんよそに置いておく。 自然とこういう技法を身に付けている人もいると思うけど、不幸にも自分はそんなに賢くなくて、そういうテクが手札にないので、自然とリテラシー高く振舞えている人のことがうらやましい。

餅は餅屋戦略

まず餅は餅屋ということで、信頼できる情報源を確保しておくというのは有効だと思う。今回の場合の自分も、そこそこ信頼できる情報源を複数フォローしていて、それらが揃ってほぼ同じ見解を示していたし、その中に矛盾や無理な点は見受けられなかったから、それを信頼することにした。

人によっては、メディアは偏向しているとか、様々な理由でもって、大手メディアを信用しないこともある。意見は実際に偏りはあるだろうが、事実ベースの情報であれば、大手メディアをおおむね信頼すべきだと思う。大手メディアが、すぐにバレる誤報を打つメリットは無いはずだからだ。

エントロピーを下げる

状況を理解するために十分な情報を揃える方向で活動するのも良いと思う。今回の場合の自分は、具体的な記者会見において当該海域と飛行ルート図を見たことで、「おおむねどこを飛んでいたのか」という情報が非常に鮮明になり、「であれば軍事的活動による墜落は考えにくいだろう」という結論に至ることができた。換言すれば、情報入手によって確度を上げ、エントロピーを下げた。

十分にエントロピーが下がっているかどうかに気付かないこともあると思う。漠然と「宮古島付近でレーダーロスト」と言われれば、なんとなく広い海で突如消失、という画を脳内に描いてしまう。

速に注意する

自分らの界隈では、自分たちで勝手に盛り上がって勝手に興奮している、鼻息を荒くしている状態の人のことを「速がある」「速が上がっている」と表現されがちである。

pha.hateblo.jp

リンク先の用法とはやや異なっているかもしれない。

センセーショナルなニュースの周辺には、だいたい速が上がりきって大興奮している感じの人がいる。そういう人が有益な情報をもたらしたことはあまりなくて、どちらかといえば、傍観者的な物知りな人がためになる知識をくれることが多い。

自分もびっくりして速が上がってしまいがちだが、センセーショナルなニュースでこそ、冷静でいることが大事だと思う。

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