Lambdaカクテル

京都在住Webエンジニアの日記です

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スタバの季節品を毎回注文しそびれる

スタバのドアを潜ると、二人か三人既に客が並んでいて、じっとメニューを——レジに立つ店員の裏に聳え立つように高く掲げられている——目でなぞりながら飲み物の味を想像していた。俺もその列に立ち、ときおりガラスケースに陳列されたデリに目をやることで、列が進む一歩一歩の隙間を埋め立てようとした。埋立地が出来上がって店員と挨拶する頃にはそんな想像はもう拭い去られていて、ホットコーヒー・レギュラー・ここで飲む・マグカップに帰着していた。

「少々お待ちください」と告げて店員がどこかに行った。会話の緊張の糸が断ち切られてだらりと垂れ下がるように俺も視線を下にやると、さっきまでは意識の外にあった季節限定品がにわかに目に飛び込んできて主張する。しまったなと思って顔を上げても、店員は背中で注文を取るようにはできていないし、コーヒーが手際よく注がれていくのをじっと見守ることしかできない。

地球の重さを感じさせるずんぐりとしたマグカップを手にくるりと店員が向き直る。「お待たせしました」との呼び掛けに、引っ掛りを悟られぬように「はい」と言う。俺はなんだかうまくいきすぎていると思った。こうした店員との会話までもがスタバの設計なのではないかという直感が働いた。これは言語的な社交ダンスだ。客がうまくダンスを踊れるように、調度品や会話、照明や動線が設計されていて、店員はアン・ドゥ・トロワと号令をかけ、俺はゆらゆら踊っているのだと思った。

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