会社で話題になっていたので,さっそく手に取って借りてきました.
『みんなではじめるデザイン批評』副題は「目的達成のためのコラボレーション&コミュニケーション改善ガイド」です.
文章がやや重たいような気がしたことから1日1章のペースで読むことにしました. 全部で7章+付録なので,ちょうど1週間の読書計画になりそうです.
目的
有益な批評の方法を学ぶ.本書は書名にデザインと銘打っているが,批評はデザイナーだけのものではないライフスキルであるとしているし,僕もその必要性は痛感している.なぜなら,エンジニアの書くコードもまた批評の対象であり,しかも「美しい」「汚い」といった美的感覚で表現されうる点においてデザインと似通っているように思えるからである.
箇条書きは自分の理解をまとめたもの.
フィードバック
- 的確なフィードバックによって会話の質を上げることができる. -フィードバックは反応・指示・批評の3類型に分類できるが,批評以外のフィードバックはデザインの改善についての有用性を持たない.
- 3類型の違いを理解し活用した上で,日常的なコミュニケーションをなめらかで有益なものにするとよい.
- 批判的思考(クリティカルシンキング)とは,目的に照らし合わせて検討する思考方法である.
- 批判的思考による分析(をアウトプットすること)が批評である.
- 良い批評は以下の3要素を含んでいる.
- 何を分析しているか.
- 何を目的としているものを今批評しているのか.
- 目的にそぐうものであるかどうかの判断.その理由は何か.
- 例えば,「xxxが目的だとしたら,yyyは適切です/適切ではありません.なぜならzzzは(aaaにおいて)xxxにそぐう/そぐわないからです.」
- 批評は独りでも自己完結できる.
仕事や日常生活において,会話が噛み合っていないなと感じることがある.それは本書風に言えばフィードバック失敗といったところだろう.目的性のある会話は,相手に何らかの反応を起こさせることを期待して行なわれるので,「ほとんどフィードバックの一種だと思う.
本節からは,とにかく目的というものを意識することが大事なのだという意思が感じられる. 目的自体は勝手に動いたり理解できなくなったりしないから,独りでも批評ができるというわけだ. 自分の書いたコードを眺めるときも,この批評モードでコードを見ているということだろう.批評を行う知識を身に付けることで,自分のコードに意見できるようになり,より目的に即したコードが生まれやすくなるだろう.
批評の重要性
- 批評は,共通語彙の確立・合意形成・イテレーションにとって有益である.
共通語彙といえばドメイン駆動設計におけるユビキタス言語を強く想像する.本書は批評という観点から見ているが,ドメイン駆動設計においては相互理解に重きが置かれていたように思える.その要となる部分は共通なのだろう.
エンジニア(僕)にとってのイテレーションとはスクラム開発におけるスプリントだ. スプリント会議で設計自体が批評されることは無いが,スプリントにおけるKPTの検討とチームへの適用の側面では批評が行われる.ここに批評スキルが寄与した結果,チームがより良くなるかもしれない.
ライフサイクルとしての批評
- 批評は,デザインや開発,ビジネスの枠に留まらない普遍的な行為であり,汎用性の高いスキルとなりうる.
- しかしながら批評という手法は発見されにくい(見過ごされがち).
- それに対して何か適当に見解を述べたり指摘を行ったりすることが批評だという認識が広まっている.
- 批評を含む,さまざまなフィードバックには正しい表現様式が重要である.
- 何を伝えるかも大事だが,どう伝えるかという側面を無視してはならない.
- 批評は「みんなの」ものである
- デザインプロセスには皆が知らぬ間に介入している.有機的にプロダクトは生み出されるし,メンバーにはその一端を担う役割と責任がある.
テレビやネットでたまに見る,泥仕合みたいにズバッと乱暴に何かを言うことは批評ではないし,本書的には「どう伝えるか」を無視する逸脱したフィードバックだといえるだろう.
自分には関係無いと思わずに批評のスキルを身に付けましょうね,という主張だった.
批評を取り入れて,先に進む
- 本書では批判的思考と伝達がカギとなる概念だ. -- 伝達とは,「自分の批判的思考を一緒に仕事をしている人に提示する方法」である.
- 考えたら伝えることが大事である.
僕はふだん「構造と表現」という言い方をしているが,伝える内容とその手法が両立しなければ有益なコミュニケーションは成立しないと思っている.そして本書によればその考えはフィードバックについても適用できるらしい.
読後メモ
言い回しが複雑で理解に時間がかかる箇所にたびたび出会った.訳書なりの難しさという感覚だ.
批判的思考の定義がシンプルで説得力のあるものだった.好きな定義.
かかった時間は執筆を含めて2時間ほど.
明日は2章を読みたい.
みんなではじめるデザイン批評―目的達成のためのコラボレーション&コミュニケーション改善ガイド
- 作者: アーロン・イリザリー,アダム・コナー,長谷川恭久,安藤貴子
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2016/05/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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