ベルリンうわの空という作品は,ベルリンという街に暮らす作者の生活そして友人との触れ合いを通じて,消費社会へと成長を遂げきった日本では忘れられがちな共同体の暖かみや,シチズンシップの片鱗を描いている. 日常系のまんがは本邦でも一定の規模と人気を誇っているけれど,このまんがは社会派日常系まんがとでも言うべきか?
Webまんがの形式でちょっと同作品を読んだことがあって,絵柄といい内容といいすっかり気に入ってしまったのでその場でAmazonで予約注文したのであった.
社会派
ふだんわれわれは,世の中のことについて考えるということをあまりしない.ドイツには社会参画の文化が根付いているようで,世の中の問題についていっしょに語りあったりすることはさほど珍しくないようだ. 日本では,貧しさや暴力といった様々な社会問題を個人のものとして突き放し,あるいは排除させることによって,見て見ぬふりをしていることが多いと,個人的には思っている. 日本にもちょっとずつ世の中のことを良くしていこうという文化ができればいいと思っている. ドイツ人の「公的なるもの」に対する態度には,伝統的なキリスト教の倫理観や,無視と排除の論理をふりかざし続けた結果行き着いてしまった独裁と非人道による支配への反省があるのかもしれない.
もちろん,隣の芝は青く見えるように,ドイツという国に全て理想を見るのはまちがっている.どちらの国にも固有の事情があって,簡単にはいかない.たとえばドイツには冷戦とその後の再統一に起因する東西格差や,低所得の移民とそれに対する感情,EUとのつながりといった様々な問題をかかえている.
とはいえ,このまんがを読んだ僕には,これからもドイツは先進国であり続けるだろうな,という希望のようなものが感じられた.というのも,登場人物(ドイツ人にかぎらない)の言動の節々に,問題を少しでも解決に近付けようという前向きな態度がにじみ出ているのだ.そういうふうに物事を考える国なのだなドイツは,と,なんだか新鮮な気持ちになった.
なんでそういうことを思ったかというと,僕が見る日本のインターネットには,世の中に対してすごく後ろ向きな態度を取る人がそれなりにいるから.うまく言えないけど,問題がそこにあると認めることを拒否してしまっているような.安心を得るかわりに,前向きな努力を手放してしまっているような.「こうじゃないと問題とは認めないよ」「こうじゃないと意見とは認めないよ」みたいな変な基準とか.日本disがしたいわけじゃないけど,自分の中ではずっと,ネットのどこかで聞いた,「日本は最も成長した発展途上国だ」という言葉が重くのしかかっている.
なんか暗い話になっちゃったけど,ほんわかしておもしろい内容なのでおすすめです.絵柄がふにゃふにゃでかわいい.
- 作者:香山 哲
- 発売日: 2020/10/17
- メディア: コミック
面白かったのでおすすめです! pic.twitter.com/Jh73jeuRto
— windymelt (@windymelt) 2020年10月17日
昔ドイツに行ったことがあるけれど,ベルリンには行ったことなかったな.いつか機会があったら訪れてみたい.わりと英語が通じるみたいだし.