自己啓発本みたいな名前をしているが、どちらかといえばその真逆の方向へと読者を誘う本で、アテンションエコノミーで構成されているインターネット、そしてインターネットにもたれかかる度合いを日に日に高めつつある社会に対する抵抗がメインテーマ。物理本で購入。
この人はバードウォッチングが好きで、定期的に鳥の話が登場する。構成も一本調子ではなくて、公園を散歩するように、ばらばらなエッセイの間を縫い進むという構成になっている。
今時は生産性とか価値みたいな概念がしばしば取り上げられるし、SNSはすぐに燃え上がるし、対話は成り立たないし、言論のコンテキストは崩壊していて、通知に心を奪われてしまう世の中だけど、そうじゃないでしょ、物理的な場が必要なのではないか、という視点から色々な話が展開される。生産だけが良いことではなくて、解体にもよさがあるのだ、という感じの話が登場する。
後半で、奴隷制にかかわった人のネームプレートを大学から撤去したことは「明白な解体」(そういうテクニカルタームらしい)である、という肯定的なニュアンスの話があって、へーそうなんですか、と思った。とはいえ、全然関係ない国の人間からすると、あまり釈然としなくて、あまり納得感はなかった。そういう概念に親しんでいる立場からすると、すばらしい、という感じがするものなのだろうか。
全体的に共感できるところがおおかった。どこからでもだいたい読める構成なので、ちまちままた読みたい。