だいたい、僕はカメラを向けたときに何も考えずにピースされるのが嫌いだ。
僕が写真を撮るのは、ある風景や情景が素敵なものだから、その様子を一枚の写真に収めたいという思いがあるからだ。ピースサインは、その一瞬を破壊する。
そもそも勝手に人の情景を記録してやろうという事自体がおこがましいのだが、その事はさておき、どうしてピースされてしまうのか疑問でならなかったのが、ふとある理由の発見により解決した。
ピースサインをするのは若い人が多い。ある程度の年齢になるとピースサインは作らない。気恥ずかしさもあるだろうが、他にも理由はある。若い人が写真を撮るのは、芸術でも思い出作りでもなく、SNS等を通じて友人に配布する「証拠写真」を作るためという場合が多い。共に写真に写ることでユウジョウを確認しているのである。別に思い出として楽しむだけならばSNSに写真をアップロードする必要は無いのである。ネットが流動的にした交友関係の中で、若者には社会から疎外される不安があるのかもしれない。
それはさておき、ピースサインされると何でもひどい写真になってしまうし、何も考えてないですようと表明しているようなもので見苦しいのでやめるべきだと思う。ピースサインで写真に写る理由があるのですか?おかしいと思いませんか?あなた。
という事を若者が考えていた。
カキオの目に涙が溜まった。「……ユウジョウ」「ユウジョウ」「ユウジョウ」二人は繰り返し言い合った。エトコが右手を差し出した。「握手です」「う……」カキオは泣きながらその手を握り返した。エトコは微笑んだ。「ユウジョウ」「ユウジョウ」「……ユウジョウ」「ユウジョウ」
— Ninja Slayer (@NJSLYR) 2011, 6月 17